2007年


2007年3月

<景気回復が内需主導になるか>

 最近の景気回復の論調は輸出主導型で、この間に安定的景気回復基調にするためには内
需主導に持っていかなければならないといわれています。しかし、国内消費はなかなか回復軌
道に乗らないのが現実です。その中にあっても、メガショッピングモールがあちらこちらにオー
プンし、オープン当初は大変な人出です。それだけを見ていると、消費も上向いてきているよう
に見えますが、そこで落とされるお金と、今までその周辺で落とされていたお金と比較してみる
と、少しも増えていません。お金の流れが地域の商店から大手ショッピングセンターに移っただ
けです。この最近よく言われる「モール」という商売の形態は、その中に多くの専門店を入れ、
それもお客を呼べる店を積極的に誘致することによって消費者を寄せ付けるという方法です。
あちらこちらにできてきたこの「モール」を良く見ると、中に入っているテナントはだいたい同じよ
うな顔ぶれです。衰退してきたといわれる直線的な商店街を一つのビルの中に集めた形態で
す。店内は若い家族連れであふれていて、団塊の世代以上はなかなか参加できないのが現実
です。

 私の住んでいる町でも、近年駅前に大型ショッピングモールができ、日曜ともなると多くの人
出でにぎわいます。一方以前からある地元スーパーは、以前なら日曜日には駐車場が満杯だ
ったのが、今では半分ぐらいしか埋まっていないのが現状です。しかしもっと小さな地域密着型
のスーパーは、もともと商圏が小さかったせいもあって、平日などはあまり影響が出ていないよ
うです。

需要が拡大しているなら一時的に人の流れが変わったとしても、ある程度時間が経つと元に
戻り、拡大した需要を分け合えるのですが、一度変わった流れがなかなか元に戻らないのは
やはり需要増の力が弱いせいではないでしょうか。

近年起こるであろう大量退職時代を見越して新規採用を増やしたり、非正規雇用を正規雇用
に変えたりしている動きがありますが、今だけを見ると確かに雇用が増えているように見えます
が、少し長い目で見るとプラスマイナス0になっていくでしょう。

そう考えると内需拡大は新しい産業が興ってこないと力強いものにはなっていきません。新し
い産業を興すのではなく、従来あって時代の流れの中で捨てさられていった産業の中に今こそ
見直されるべき職域、産業を見出し、それを復興させていくことも必要ではないかと考えます。
大量生産、大量消費の戦後50年間の後に、大量生産地が国内から海外に移り、消費や、人
の流れが都会に集中し、近年さらに都心一極集中化が起こっている中で、地方の山林、休耕
田は荒れ果て、四方を海に囲まれているのにもかかわらず、漁業は高齢化の波に飲み込まれ
ようとしています。一次産業だけでは生活できないといいます。安い外国産の食料品、木材が
大量に輸入されている現在、安全、安心という日本人が昔からこだわる点にスポットを当てて、
今後都会で生まれてくる元気な大量退職者を地方回帰して頂いたらいかがでしょう。年金を受
給し、ある程度自給自足し、余った物は直接消費者に販売する、そして何より山野、自然を後
世につないでいく。地方と都市、高齢者と若者、あらゆるところで循環していく社会を育てていく
ことが重要でしょう。

<メタル・エキスプレス>

ステンレスの高騰が止まりません。海外の需要が強く、特に中国の需要が強烈です。大量生
産するために大量の資源をインプットし、大量の製品、部品をアウトプットしています。大量生
産する背景には旺盛な需要がありますが、中国政府も認めているように、供給過剰になってき
ています。量産することによってコストを下げ、競争に勝ち抜き、シェアーを拡大することを目標
にしていますが、資源を大量に購入することには限りがあり、また、天然資源は急な需要増に
は対応できず、需給バランスの崩れにより原価は高騰してきました。量産でコストを下げたいと
いう思いに逆行する動向です。

ステンレス鋼板の毎月の値上がりに国内市場は嫌気をきたし、ここにきて急激にニッケル系ス
テンレス(SUS304)離れを起こしだし、マンガン系(SUS430)に変更したり、鉄にメッキ処理を施
した製品に変更したりされています。化学薬品、塩分等を浴びる恐れがある商品では耐腐食
性の面で304系を使用しなければならないでしょうが、見ためで高級感を持たせる為だけでス
テンレス=304系を使用するのであれば、430系で十分対応できますし又、最終需要家もそ
の方向に向かう傾向が急激に強くなってきています。

2007年5月

<格差社会と公共性>

 内閣府が発表した1〜3月のGDP成長率は年率換算で2.4%となり、政府予測の想定内の成長と自画自賛しています。世界のトヨタも経常利益2兆円超えを発表し、わが世の春を謳歌している感があります。そのトヨタも欧米での販売拡大と、為替差益が大きく貢献している一方で、国内の販売には苦戦しています。金融、資源、原材料といった、経済の川上の部門は、グローバル競争に勝ち抜くために再編、統合が進み、寡占化が起こっています。「市場の自由競争に任せるほうが国内の経済は活性化する」という名の下に、戦後独占禁止法が作られ、公正取引委員会の監視の下に寡占化していた巨大企業が分割された歴史を経て、今、バブル崩壊の後の不況を乗り切るために「市場の自由競争に任せるほうが経済は活性化する」という同じ文言の下での規制緩和が進められ、従来分割された業界を再編させ、大企業はより巨大化、寡占化を進めています。それによって、国際競争力を高める一方で、国内に向けては価格コントロール力も高めていくです。強い企業をより強くして他の企業を牽引していく、情報、富が集中する都会をより豊かにして地方を引っ張っていく、何かそのような国づくりを「美しい国日本」は目指しているように感じてなりません。

格差はいつの時代にもあります、どこの国にもあります。本来ないはずの共産主義の国家にも資本主義の国家以上に今はあります。1970年代の所得階層の上位20%と下位20%の所得格差は約10倍でした。それが2000年代に入るとその差が168倍になっています。格差があるのが問題なのではなく、その差が広がる事により社会不安が増え、自殺者が増加し、凶悪犯罪が増えていることが問題なのです。大企業と中小企業、都市と地方、若者と高齢者、富める者と貧しき者といった対極にあるものがお互い支えあっていた構図が今、相手のことに無関心になり、自由競争なのだから仕方がない、お前たちもそうすればいいじゃないか的な風潮になってきているような気がします。

先日、青春18キップ(これを買っているのは団塊の世代以上が多いそうです)を使って岐阜県の「郡上八幡」に行ってきました。途中JR東海の高山線から第3セクターの「長良川鉄道」に乗り換えます。行き止まりの線で利用するのは主に地域の学生、住民の方々です。都会と離れているので多くの通勤客の利用は望めず、行き止まりの線なので多くの観光客も望めないローカル線です。民営化されたため今では1時間に1本の2両編成の列車を走らせています。多分それでも赤字でしょう。運転手さんが途中の無人駅で車掌を兼ね、自ら安全を確認しながら運行しているのです。近い将来この線も廃線になり、バスに変るのだろうなと感じました。春休みの観光シーズンの日曜日、名古屋近郊、高山線のJRは満員でしたが、第3セクターの線に乗り換えた途端に2両編成がガラガラ。民営化するのだから、黒字になりやすく、効率的な線はJRに移管し、競争原理を働かせてより収益構造を合理化し高めていく一方で、非効率、低収益路線は地方財政半官の第3セクターという形態に形を変えて残しています。本来鉄道は公共性の高い乗り物であったはずです。公共性とは何であったのかもう一度考え直させられた老いらくの青春の旅でした。


(参考文献 文芸春秋発行 内橋克人著 「悪魔のサイクル」より)

<メタル・エキスプレス>

―ステンレス価格推移表−

年内800円/kgベースの声も伝えられ、ステンレスメーカーはフル生産稼動で、大幅利益増である。その一方で国内一般流通は余りの高騰に嫌気がさし、ステンレス離れ、SUS304系から430系への変更が急激に進み、一般市中荷動きはここへ来てより一層止まってきている。

2007年7月

<会社は誰のものか?>

 7月2日発表の日銀短観の景気業況判断DI(「良い」−「悪い」)によると、大企業製造業では3月23→6月23→9月予測22とほぼ横ばいですが、中小企業のそれは8→6→4とやや下降基調にあります。大手企業の範疇で仕事が回っている様相があり、その直の下請けの中小企業はまだその恩恵を被っていますが、それから外れると厳しい状況が続いているのが現実です。

そのような中で中堅企業の「ブルドックソース」が外資系ファンドのTOB攻勢に裁判沙汰まで発展しましたが、その時ささやかれたのが「会社は誰のものか?」と言うことでした。勿論創業者と言えども 社員が一人でもいる以上は、社長個人の所有物ではありません。開業資金は創業社長が出資したにせよ、その後の利益は社員と共に稼ぎ出し、その利益を再投資循環に組み入れていくのです。

 投資とは、「将来の収益を見込んで資金を投入すること」、辞書にはこのように書かれています。外資系ファンドの投資の仕組みは良く分かりませんが、私たちにも投資は付いて回ります。設備投資、研究開発投資、人的投資等です。特に中小企業にとっては人的投資が大きな役割をします。設備投資ならこの機械を入れるとこれだけ生産性があがるとか、新たなあの仕事ができ、これだけの収益を見込めるとか事前に考えます。設備投資をしたものの、思っているように生産が上がらなかったり、収益が伸びないと原因を調べたり、現場や営業にハッパをかけたりするものです。しかし人的投資はどうでしょう。前もって何をしてもらうために人を入れるのか、その成果はいつ頃どれくらい期待できるのかと前もって考えているでしょうか。忙しくなったから人を入れる、機械を増やしたから入れるというように人への投資といいながらも 採用は人に主体性を置かずに、景気環境や設備によって変化させているに過ぎないのではないでしょうか。新たに雇用した人が、その人の能力を開花させるまで、じっくり教育し続けていくことが大事ですが・・・。

創業100年以上の企業は日本では推定10万社以上といわれています。その数は世界を見渡しても圧倒的な首位にいます。歴史の中において侵略されたことがないという事実はあるにしても、それにしてもダントツです。野村 進著の「千年働いてきました」によると、そのような老舗製造業には五つの共通項があると書かれています。それは

1.同属経営は多いものの企業存続のためには血族に固執しない。

2.時代の変化にしなやかに対応する。

3.創業以来の家業の部分は頑固に守り抜いている。

4.自社の分をわきまえる。

5.町人の正義を実践する。      

1日の貿易決済額が8兆円規模であるのに対して、為替出来高は約38倍の300兆円ともいわれる巨大な投資マネーが私たちの目に見えないところで動いている現代社会においてこそ、もう一度考え直さなければならないのです「会社は誰のものか?」と。

<メタル・エキスプレス>

ステンレスのスクラップが、6月中旬には450円/kg超まで行ったのが、その後3週間位の間に170円/kgに急落した。輸出も成約せず、電炉も持ち込みストップを申し渡したので、一気に市場にあふれ価格が急落した。スクラップが乱高下を繰り返す中、上がりすぎたステンレス鋼板は高値反転相場を探りつつ、盆休みにかけて投売りが出てくる状況が懸念されている。メーカーは相変わらず強気な姿勢を崩さないが、ユーザーのステンレス離れが加速し、流通も高値反転を警戒して、在庫仕入れを手控えつつあるのも加わって、荷動きは非常に低調である。