2016年


2016年5月
<人は石垣、人は城>

働く人が退職する理由は、給料、休みの少なさ、福利厚生への不満もあるが、第1位は職場での人間関係である。一方、経営者の悩みも資金繰り、売上の確保、経営戦略の立案と多岐にわたるが、多くの経営者が共通して経営上の力点の上位に上げるのが「社員教育」である。私はいつも「社員教育」とはおこがましいと感じつつも、言い古された言葉だが「企業は人なり」なんだと考えている。

 企業を「会社法人」ともいう。これは、社会的活動を法律で認められた義務と権利を持って主体的に行う組織体(一種の社会)のことをいうのであって、その社会も人間が複数存在してこそ成り立つものであり、無人島に一人で生活していてもそれは社会と言えないのである。

企業が活動する場は、地域社会の中に存在し、企業そのものも一つの社会を構成しているのである。そして、社会の最小単位である家族を持った人々の集まりが企業である以上、企業は外の社会にも責任があるように(CSR)、企業を構成する社員の持つ社会(家族)にも責任を負わなければならない。社員に家族が存在するように、経営者にも家族が存在する。中小企業が借り入れをする場合、大抵、経営者の個人保証を求められる。経営者は株主総会で代表して経営を委託されているだけであるのだが、中小企業の場合これもあくまで形式上である。だから、もしもの場合、お前の家族も人質だぞと言われているようなものである。だからこそ、経営者は自分の家族を守ることも含めて、会社を存続させることに全力を傾けなければならない。

「企業は人なり」とよく言われるが、その「人」とは、社員は勿論、経営者も含めての「人」である。社員教育も実用であるが、最も重要なのは経営者の教育なのである。特に中小企業はトップ次第である。しかし、社内にトップを教育してくれる人は通常存在しない。だから、トップは常に勉強しなければならないし、社内に教えてくれる人がいなければ、学びの場に積極的に出向いていかなければならない。又、社員が各自持っているバックボーンの社会(家庭)を、経営者は自身が持っているバックボーンの社会(家庭)を共に守っていくために、両者共通の社会(会社)を盛り上げていかなければならないのである。

 中小企業では社員は常に社長を見ている。だったら堂々と見せてやれ。俺を見ろと言ってやれ。勿論、社長室など造るものではない。常に社員に自分の姿をさらしておくのである。中小企業に必要なのは「社員教育」ではなく、「社員共育」である。

<最近の鉄鋼の動向>

東京製鉄は18日、2016年5月契約分の鋼材販売価格(店売り向け)に関して、全品種で値上げすると発表した。全品種の値上げは13年12月契約以来2年5カ月ぶり。値上げ幅は熱延鋼板、酸洗鋼板は3000円程度。

 又、国内高炉各社も6月積みから薄板値上げを検討している。海外市況の好転、それに伴う輸入価格の上昇、原材料価格のコストアップなど、鉄鋼事業を取り巻く環境が激変する中、価格低迷が長期化していた国内薄板市場で採算改善を図ろうとするもので、現在、需要環境を踏まえながら値上げ幅などを検討しているようだ。5月の連休明けにも正式に値上げを公表する見込み。


<今月の1冊>「新・観光立国論」デービッド・アトキンソン著

「日本は世界でも数少ない観光大国になりえる国の一つです。そう聞くと日本は、京都などに多くの外国人観光客が訪れており、すでに観光大国になっていると胸を張る方もいるかもしれません。しかし、残念ながらそれは大きな勘違いです。1300万人しか来ないというのは驚くほど少ない数と言わざるを得ません。世界を見渡せばこの2倍、3倍は当たり前です。」

「観光立国になるためには『も』と言う考え方が非常に重要だと思っています。フルメニューの重要性です。自然・季候・文化・食事という4つの要素はまさにこのフルメニューの重要性を説いています。どれか一つを強みとして打ち出せば観光客はわっと押し寄せるというのは幻想です。仮にどれか一つの強みを世界にアピールして受け入れられたとしても1回行けば十分という国にしかならないでしょう。観光産業が成立している国は総じてリピーターが多いことで知られています。それには『も』という考え方が必要です」

「評価というものは周囲が行うものであって、自分たちが下すものではありません。自分たちのことを主観に沿って褒めたたえることは、評価ではなく自画自賛に過ぎません」


<最近の動き>
伊勢志摩サミットの開催に合わせて、現地のホテルのレストランで使用されるメニューブックのデザイン表紙を製作させて頂きました。

2016年3月
<決断力>

経営者は時として決断しなければならない時がある。「決定する」と「決断する」は違う。「決定する」とは一度決めたことでも、やってみて不都合がわかればすぐ修正してまたやってみることの繰り返しで、その都度おこる決め事が決定である。「決断する」場合は、大抵大きなリスクを伴う。失敗すると大変なことになるかもしれないが、うまくいけば大きな飛躍や転機になることがある。まさに書いて字のごとく「退路を断つ」覚悟をもってしなければならない決め事が決断であろう。日常的に決定することは多々起こりうるが、決断することはそう頻繁には起こらない。しかし、経営をしていると必ずそういう時があるものである。又、そういうことがないのは、最初からリスクを避けているからかもしれない。非常に難しく、今までやったことのない仕事の話が来た時、深く考えずに、「やったことがない、忙しいから断る」だけでは断ることを決定しただけである。やったことがない、しかも非常に難しい仕事だからこそ、現状に照らし合わせて考えるのではなく、自社の将来にとってその仕事をやることが必要かどうかを含めて真剣に考え、答えを出すのが決断であろう。

1985年頃、先々代の社長の時代に、あるシャーリング屋さんが廃業されるにあたって、そこがやっていた印刷鋼板の切断加工をしませんかという話があった。他のシャーリング屋さんにこの話をすると、傷をつけてはいけない、印刷不良を選別しなければいけない等、今までやったことがない上に、その時はそこそこ忙しかったので、みな断られたそうです。皆がやらない、できないのなら一度検討してみよう、まして印刷鋼板という付加価値の高い商品を扱うのは今までになかったことであるということで、思い切って受ける方向で話を進めました。結果、次から次に仕事が入り、2年後には設備を増強し対応したのであるが、1990年、バブルが崩壊し、翌年からその仕事は急速に海外生産に切り替わっていき、別注で導入した機械だけが他に転用もできず残ってしまったのである。その機械も数年後には思い切って廃棄してしまった。この時の決断は、失敗だったのであろうか。

やりなれている仕事がいいのは誰でも一緒である。しかし、未来永劫安定的な仕事というものは存在しないのである。新しいこと、難しいことのチャンスが巡ってきたときには(誰にでも必ず巡ってくる)、リスクを恐れず、しかし、無謀ではなく、思慮深く、そして最後には「エイ・ヤー」で決断するのが経営者の務めである。結果は誰にもわからない。そして結果責任は勿論経営者が背負うのである。

<最近の鉄鋼の動向>

中国の2015年の粗鋼生産量は34年ぶりに前年実績を下回ったが、依然8億トンを超える生産を記録。さらに年間輸出量が1億1240万トンと初めて1億トンの大台を突破した。中国経済の減速がアジアなどの鉄鋼市場に与える影響は大きく、依然設備過剰状態が続いている。中国経済が軟着陸することを期待すると共に、中国の鉄鋼過剰問題に関しては1、2年での解消は難しく、需給が抜本的に改善するには相当な時間がかかると見られている。

 輸出環境の悪化に関連し、日本鉄鋼業の再編や合理化の可能性にも触れ、「世界の鉄鋼業でもうかっている会社は少ない。近景にはないが、能力過剰が続けば将来、絶対にないとはいえない」と日本鉄鋼連盟会長が定例記者会見で述べている。


<今月の1冊>「デフレの正体」 藻谷 浩介著

「経済成長率が落ちている、成長戦略をとれ、デフレ対策をしろ、日銀はもっと金融緩和をしろという主張。マクロ政策にまだ目に見える効果が期待できると本気で信じている日本人が何人ぐらいいるのでしょうか。景気の波を打ち消すほど大きい人口の波が、日本経済を洗っているのである。特にもっとも需要を作り出す生産年齢人口(1660歳)が劇的に減少しているのです。」

「生産年齢人口が34割減った後の国土の姿はどうなっているのでしょうか。戦後半世紀を支配した、都市開発地域拡大・容積率上昇・土地神話といったものは、すべて崩壊しています。生産年齢人口=土地利用者の減少に伴う地価の著しい下落と、土地を保有するだけで利益を得てきた世代の死去に伴い、不動産取引はずっと流動化します。大量生産市場がゆっくりと縮小していく一方で、地域地域の個性を活かした手作りの地産地消品を供給する零細事業者(新規参入する社会企業家も含み)が増え続けます。海外から安価な大量生産普及品を購入する流れも拡大しますが、他方で少し遅れて人口成熟してくるアジア諸国などに向け、そうした地産地消品を輸出する流れも年々太くなっていくでしょう。」


最近の動き>

デザイナーさんがデザインした金属製のおしゃれな椅子を3種類各1台製作させていただきました。製作は従来のお得意先に依頼し、満足していただける商品というより、作品になりました。


2016年1月
新年あけましておめでとうございます。

<年頭にあたって>

 今年の「トンボの片思い」は、私自身が今まで小なりと言えど経営者としてやってきて、多くの失敗から学んだこと、やってよかったと思えたことを、できるだけ掘り下げて考えて書いていくことにしました。今もうまくいっているとはお世辞にも言えませんが、伝えられるときに伝えておかなければという思いで残していきます。

<時流を読む>

毎年15日、弊社は新年ミーテイングと称して午前中会議を行います。各自が上半期の反省と後半の計画修正を発表するのですが、メインはトップが今起こっていること、これから起こるであろうと思う事を予測し、それに対応するには何が必要か、どんなことをしていくべきなのかを正月休みの間にじっくり考え、社員に伝えることだと考えています。

時代の流れを読み解くことなど誰もできないのはわかっていますが、それでも経営者は考えなければならないのです。流れに身を任せていれば成長する時代は終わったことだけは誰もが認める自明の理なのですから。

2次大戦後、焼け野原になった日本が復興していく姿は、まさに「3丁目の夕日」の映画の世界でした。あれが欲しい、これもしたい、もっと働いて家族を幸せにしたい、目標が単純明快でした。それが高度成長をもたらし、1964年東京オリンピックの年にまさに花開き、先進国の仲間入りをしていきました。その後、平成の世になって「戦後は終わった」といわれ、先進国から成熟国になっていったのです。先進国の時はまだ経済成長するのではという希望が持てましたが、成熟国になると周知のように低成長時代になりました。今更、過去のように高度経済成長は望むべくもありません。今、低開発国と言われる国々が急激な高度成長をしているのは、まさに日本の戦後の一時期を見る思いです。その時代は原材料により近い企業が収益を上げていました。過去の一時期「松下電器産業」は安売り家電量販店には商品を販売しないと言っていましたが、これはメーカー(川上)が強い時代の象徴的な言葉です。しかしその数年後、急激な販売・流通の変化の波にのまれ、今ではどこの量販店でもすべてのメーカーの電気製品が並んでいます。これは、消費者により近いところ(川下)が強くなってきた証拠です。成熟国になると、川上より川下、より消費者に近いところの企業を社会がより必要としてきたのです。

こういったことも踏まえ、弊社も原材料のみの販売から、少しでも川下に近付くために、材料に加工を施した半製品や、レーザー加工機による完成品の販売を手掛けるように舵を切りました。まだまだ道半ばにも至っていませんが、方向は正しいと思っています。

 このように、大きな方向を見定めて舵を切るか切らないかは、舵を握っている船長にしかできないのです。そしてその船には、その船を動かしている社員が一緒に乗っていて、又、その社員の家族、船長の家族まで乗っているのですからその責任は重大です。

「時流を読む」ために必要なことは2つです。一つは色々な人の話を素直な気持ちで聞くこと、そのためにそういった場に積極的に出向くことです。その中にはお客様のもとに行って「注文下さい」と言いに行くのもいいでしょうが、じっくりとトップの方のお話を聞くことも入っています。そしてもう一つは本を読むことです。どんな本を読んでいいかわからないときは、それも色んな人に「最近読んで面白かった本はなんですか」と聞けばいいのです。読み終わっていて了解が得られればその方から借りて読めばいいのです。ITを駆使すれば本の紹介の情報などはあふれかえっています。

低成長時代はライバルとの激戦の時代ともいえます。そうした荒海の中、目指すべき港は決まっています。「社員や取引先様、そして家族が幸せになる港」です。その港に向かうのに、どの方法で潮流を乗り切っていくのか、後は自分の頭で考え行動に移すのが経営者の役割です。

<今月の1冊>「強い会社のすごい共通点」 丸山 孝明著

「よく会社の三年後、五年後を話し合われる会社がありますが、もうそこで経営計画の入り口を間違われているといえます。私たち中心に世の中が動いているのであれば、私たちの3年後の目標を話し合えばよいでしょうが、私たち中心に世の中は動いていません。世の中の変化に私たちが必死になって合わせていくのが経営です。」

「売上は『上げる』のではなく『上がる』といえます。お客様への訪問頻度を『あげる』と売り上げは『上がり』ます。結果に目が行きがちですが、大事なことは原因の方です。変えなければいけないのは結果を生み出す原因となる意識・習慣・行動です。これを変化させることが大変なのです。」


<最近の動き>

昨 年の118日に開催されました「ものフェス2015」には、多くの地域の方々に来ていただきました。今回の出店で特筆すべきことは、来場されたお子さん達にペーパークラフト手作り教室を開いたことです。閉館時間をオーバーしても一生懸命作りつづける子供達がいて、我々にも大いなる触発を与えてくれました。